埃は余白を記憶するか
僕の部屋にはそこそこの数の本がある。最近は電子書籍を購入するようになったので部屋の侵食スピードはおさまりつつあるが、中学時代からこつこつ買っては部屋に運んでいたので、収納に困るくらいの数にはなっていた。小説やラノベが大半で、いくつかの漫画もある。本棚1にはもう入りきらないし、家族に見られたくない本2は机の引き出しやベッドの下の収納スペースに入れていた。
しかし、特にラノベは僕が中学生の頃に読んでいたもので、趣味嗜好がいくらか変わった今はもう、読み返すこともあまりないし、いくつかの思い入れのあるシリーズ3以外は全部処分することにした。
机の一番下の引き出しを開けた。大量の本が詰まっている。中には2巻と4巻しかないシリーズもあった――おそらく中学時代に友人に借りて他の部分は読んだのだろう。また、確実に二度と読まない自信がある本もいくつかある。
そういったものを全部床に出して積み重ね、数を数えると60冊近くあった。これでも部屋の本の半分にも満たないが、ひとまず別れが惜しくない本はこのくらいだった。
さて、どうしよう。古紙としてリサイクルするには決まった日まで待つ必要がある。ただ、確実に重いこれらを売りに持っていきたくはない。ならば車で行こうか、しかし僕は駐車場に車をとめる事がかなり苦手でひとりで行きたくはない。
スマホで近くのブックオフを検索する。1番近いのは5駅となりの店舗だ。僕は覚悟を決めた。
普段大学に行く時に使用しているリュックサックを持ってきた。中のものを全て出し、本を詰めていく。ぎっちぎちに本が詰まったリュックは、まるで本を大量に運ぶのが仕事だとでも言うような風格があった。
それでも半分くらいしか入らなかったので、大きな紙袋も持ってきた。幸い、ひとつの紙袋に残りの全ての本が入った。
リュックサックと紙袋には同じくらいの量の本が入っているが、紙袋の紐が手にくい込んでかなり痛い。何度も持ち替えながら歩いた。
古いラノベや漫画が多かったから、買取金額は大したことがなかった。一冊一冊に5円か10円の値がランダムに振り分けられ、最終的には345円になった。電車の運賃を考えるとほぼ0円だ。まあ、お金を増やしに行ったわけではなく、部屋を片付けるためだったので別にいいや。