革命学舎

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書く、これしか出来ないから。

見えぬ白粒の周波数

投稿日: 2025-05-14

タグ: #story

無洗米が安いらしい。どこかでそんな話を聞いた。

今年は米の値段が高い。理由はよくわからないが、棚の米袋がどれもずしりと高級品に見える。そんな中、安い米があるならばどれほど嬉しいだろうか。

「米を研ぐ」という言葉がある。研究の「研」だ。学問のように米と向き合え、と誰かが言ったのだろう。嫌だね、そんなこと。僕は卵売り場を曲がり、ちょうどスーパーで米の売り場を見つけたところだった。

さて、無洗米は本当に安いのか。棚に並んだ米の値段を見比べる。確かに普通の米より二割ほど安い。不思議だ。手間が省けるなら高くなるはずではないか。

昔、祖母は米の研ぎ汁で植木に水をやっていた。「もったいない」が口癖だった。彼女は戦争を知っている。我々は何を知っているのだろうか。

スマートフォンを取り出して無洗米の製造工程を調べた。「無洗米は加工がされているため少し高い」――知らない誰かがそう書いている。では、なぜ安いのか。まあいい。安いという事実が最も大切だ。

無洗米の袋を手に取った。軽い。米というより空気を買っているような感覚だ。袋の裏面を読む。成分表示と調理法。そして小さな注意書き。

「本製品は放射線照射処理を行っています」

放射線。とりわけあの震災以降、放射線は見えない「不安」の象徴になった。しかし、食品への放射線照射は保存技術として古くから行われている。恐れるべきは無知なのか、それとも知識なのか。

レジの女性は疲れた顔をしている。彼女は僕の購入品に関心がない。それは救いでもある。興味津々で購入品を見られるよりはずっといい。

帰り道、無洗米の袋が妙に軽いことが気になった。中身が入っていないのではないかという疑念が湧く。まさかそんなことはないだろう。見えないから信じられないだけだ。放射線と同じように。

自宅に戻ると、早速米を研ごうとした。いや、無洗米だから研がなくていいのだった。なんでもいい。僕は米びつの蓋を開け、3000円代の戦利品と向き合った。パッケージには、こう書かれていた。

無線

見間違いかと思った。でも、そこには確かにWiFiのマークが書いてあった。本製品は脳に直接、食感と味覚を送信します、おおむねそんな説明も書いてあった。僕は再度、スーパーへ向かった。