どこよりも遠い場所にいる君へ | 感想
映画を見た。
どこよりも遠い場所にいる君へ、だ。
結論から言うとかなりよかった。中学からの友人と見に行ったが、僕は隣でボロボロ泣いてしまった。
特に、七緒が海に飛び込んで過去へ帰ってしまったところが一番悲しかった。
主人公に対しての七緒は、所詮ただの少女だった。主人公は(歪んでいるとはいえ)ほかの女性からも好意を寄せられている一方、七緒にとっての主人公は唯一無二だ。自分が過去から来た人間であることを知っている数少ない人間で、七緒の生活は基本的に主人公と椿さんの中で完結している。
この非対称性は安心感を与える。つまり、七緒は絶対に裏切らないということだ。絶対に裏切らないヒロインなんて、結ばれるしかないだろう。僕は基本的に主人公に感情移入しながら見るため、「七緒ずっと一緒にいよ〜ね❤」って思いながら見ていた。
そんな中、七緒が過去に戻るといいだした。過去に戻ってもいいことなんてないし、好きならそのままずっと一緒に生きればいいのに。七緒は裏切らないと思っていたから帰ってしまったのが悲しかった。
けれど実際は、物理的にあの場面で去って過去へ戻っていっちゃったけど、50年間ずっと裏切らずにいてくれたわけだ。七緒が教師になり、校長になり、50年かけて主人公の居場所を丸ごと作っていたことが発覚する。2026年世界では七緒が主人公に依存しているが、全体としては主人公が七緒に依存していて、時代ごとに非対称でいて全体で対称で、それでいいのかもしれない。
ただ、(これは作中で主人公が椿さんに叫ぶシーンで言っていた内容でもあるが)その別れのコストは全部七緒が払っていて、主人公にはもう何もできない。それが残酷だった。対称になったのは「居場所」の話だけで、「想い」は最初から最後まで非対称のままだ。過去に戻った七緒だけが主人公の出会いに囚われていて、おそらく主人公はこの出会いとは異なる出会いをいくつもして生きていくわけで、報われない。非対称性は2026年のひと夏だけじゃなく、七緒の一生を通してずっと続いている。
以下、まとまりがないので箇条書きの感想。
- 主人公が七緒を好きになる動機が薄いと思った。七緒と別れるシーンで七緒がいいことを言うのは好みだが、それまでには何もなくないか? 主人公が七緒を外の世界に連れ出していく光の役目をしているが、逆はなんだろう。
- 主人公に構ってくる男子がいた。主人公はいつも鬱陶しそうにしていて邪険に扱うのだが、それでも常に世話を焼いていた。最後にストーリーに大きく関わる方向で理由があったとわかるのだが、それまで僕はBLなんだろうと思っていた。
- 主人公も最後飛び込めばよかったのに。一緒に過去に行って、一緒にずっと暮らせばいい。僕はもう少しハッピーな方が好きだ。最後主人公は文化祭でピアノを弾くシーンで終わり、お互いがお互いのなすべきことをする。せっかく仲良くなったんだからそれぞれ違う道を歩むのが悲しい。物語の構造上この結末を選べないのはわかってて、なぜならこれはそれぞれが逃げるのをやめるストーリーだからだ。
- 最後、文化祭のステージで主人公がピアノを弾くシーンで終わり、演奏シーンが始まるとともに暗転してエンドロールが流れるのだが、エンディングソングなんて不要でここではただ「翼をください」のピアノを流したほうが感動が大きかったと思う。七緒のいない場所で自分のために弾き始めるという終わり方にするには、別の曲が必要で、逃避の曲は不要だという意見はまあわかりはするけど。
- 上二つはおそらく物語的には映画の進行が正しくて、ただ僕が主人公みたいに歩いていけないだけだと思う。
- もし僕が2070年の未来に飛ばされたらどう思うだろうか。七緒みたいに自分は生きてはいけないと思ったり、しわくちゃのおじいさんかもしれないと怯えたりするだろうか。もちろんこれは仮定の話で経験したわけではないから無責任な感想だが、僕はそうは思わない気がする。ただ React も TypeScript も使われていないだろうし、エンジニアがどうなっているかもわからないからかなり大変ではあると思う。逆ならギリなんとかならないかな。1990年くらいのWebブラウザ関連のだったらまだましかも。
- 七緒は過去に戻ったあと未婚のまま仕事に専念してそのまま亡くなった、という終わり方だった。本当にそれで幸せだったのだろうか。未来の主人公が入学してくるから、という理由で頑張るのは理解できるが、会えずに死んでいる。
- 僕は景色を見て感動することがない。視界に映っているのはわかるし心地良い寄りの景色であることも賛同するが、
海にかかる虹をみて生きていいって思えるんだなぁ、と思った。思い出した、そういえば自分のために汗をかいてくれたこと自体が嬉しかった、という内容のことを言っていた。 - 犯罪というテーマが関わっているため、ところどころ論理的(というか法学的)なツッコミを入れたいところとかはあった。
- 主人公を歪みながら愛す人(名前は映画が終わったら忘れた。調べたら三島たまきと言うらしい)が話す動機、おそらく観客一般に刺さるように、「おれって三島さんだ……」って思わせるようにしていると思う。ただ僕はすべての作品を主人公に感情移入しながら見るため、僕が分裂しちゃって大変だった。真面目な話をすると七緒に会う前の主人公について自分と似ていると発言しているので実質主人公だし、まあ移入しちゃうよね。「七緒ずっと一緒にいよ〜ね」と思いながら見ていて、二人が別々の道を歩む結末を悲しんでいる僕は、結末に対する願いがかなり三島側にあるのも原因だろう。

